story
そこは東京郊外にあるガソリンスタンド。
父親から受け継いだこの店でせっせとタオルを畳んでいる若い男、近杉。
仕事に不真面目なアルバイトの宝居はどうやら読者モデルもしているようだ。
夏。ガソリンの匂い。ついたり止まったりする古い扇風機。
そこに突然、根森と名乗る男が看護師の示野という女を引き連れてやって来る。
どうやらその男は小説家。そして近杉の異母兄らしい……。
「あ、これはどうも、わたくし、あなたの兄、兄の者でして」
地面に残る灼けたタイヤの跡。冷蔵庫の腐ったハム。大事なお客様にはマドレーヌ。
ガソリンスタンドに集う人々の夏の一幕。